(感想)「裁判官!当職そこが知りたかったのです。」裁判官 岡口基一 弁護士 中村真
「裁判官!当職そこが知りたかったのです。」裁判官 岡口基一 弁護士 中村真
https://www.amazon.co.jp/裁判官-当職そこが知りたかったのです%E3%80%82-民事訴訟がはかどる本-岡口-基一/dp/4313511652
一言:サクッと読めてそこそこ面白い
裁判官の視点から民事訴訟における注意点が書いてある。ここが一番の読みどころ。
1 書面
- 書面の分量は、少ないほうがいい。1ページにまとめてくれるのがベストなくらい。長くなるのであれば、最初の1頁目に要旨を書くなどすべき。長い書面は、その分厚さを見ただけで読む気がなくなります。
- それから、内容的には、問題提起・理由・結論という組み立てがきちんとあって、それに肉付けされているものが良い。ストンと頭に入ってくるので、分量が多くてもすらすらと読める
- ロジカルな組み立てとは関係ない部分は、裁判官は読み飛ばしている
- 訴状で、複雑な訴訟物であってもしっかり書けていると、もうそれだけで「この人わかっている人だ」と代理人を信頼する
- 訴状を読んでとりあえずの心証を取る。訴状は極めて重要
- 「よって書き」は絶対に書くこと
- 訴状は代理人の印象を決める。最初に訴状で印象をすり込むべき
- しょうもない主張にも一応反論してくれるとありがたいが、反論しなくても影響はない
- 訴状には、要件事実の他に関連事実として、5W1H。最低限の情報は一応出しておくべき。今、実家にいるのか、一人暮らしなのかとか。その人がどういう人かわかる情報があると、例えば原告本人について、イメージが膨らんでいくんですけど、要件事実だけバンバン書いちゃうと、まずその人がどういう人かわからない。
- 訴状が長くなったら、目次や箇条書きをつける
- たいした内容じゃないのに、分厚いのは最悪。それだけでダメとなる。この内容でこんなにも分厚く書いてしまうということは、なんでもこうやって内容以外のところで裁判官を惑わせようとする先生なんだなと思う。
2 立証
- 立証趣旨のところは詳しく書いておいたほうが、特にボリュームのある資料とかでは、いい
- 証拠の表記:枝番号をつけること、頁番号も書くこと
- 適時提出主義:裁判官は、とにかく早く出してもらったほうがいい。早く真実を知りたいわけです。まさにベストエビデンスを訴状に書いて、ファーストインプレッションを狙うのが一番いいに決まっている。それで心証はほぼ固まっちゃうから。だから、ベストエビデンスを遅く出すのは全く理由がわからない。なんで遅くなったんだろうと思う。遅く出している証拠は、弱いからなのかなとか考えてしまう。だから、これは隠し玉だとか、遅くなった理由がはっきり分かればいい。
3 尋問
- 特に当事者の陳述書なんて全く価値はない。尋問で省略したいところを書いておく
- 尋問:動機を中心に考える
- 動機があったか、その動機に従って動いたと考えておかしくないか、この2点を新しく現れた周辺事情にも照らして、絶えず点検している
- 基本的な周辺情報は、陳述書に書いて欲しい
- 尋問で変わる印象:練習は必要。自然体がいい。作りすぎているなという印象はあまり良くない。練習しすぎも良くない
4 和解
- 和解してください
5 審理の終結
- 最終準備書面:主張をまとめる系の書面は本当はあまりいらない
- ただ、直接証拠がないなどで、結論をどちらんいするか悩ましい事件は別です。こういう事件では、最終準備書面が効果的なこともあります。結論をどっちかにしなきゃいけないと裁判官も決めかねているわけです。けど、どちらかに決めるとなると、多数の間接証拠同士の勝負なので、判決の中で反対の間接証拠を全部潰していかないといけない
- 反対の間接証拠を潰すところで延々と悩んで、2〜3日かかっている
- 最終準備書面に相手の反対証拠の潰し方を全部書いてきてくれると、本当にありがたい
6 判決
7 控訴
省略
8 裁判所から見た内外のお仕事事情
- 裁判所に信頼される代理人になるには、一つひとつの仕事をきっちりやること。形も大事だが、中身も大事。依頼者をちゃんと説得できる先生は信頼します。今、依頼者のおつかいになっている先生が多い。無理な主張を平気でしてくるので、本人訴訟を同じになっていている弁護士が多い
- 裁判官がやりやすい代理人:紛争の全体像が把握できている人。周辺の紛争も含めて、この紛争を解決してあげるんだという気概のある人。裁判官と弁護士で協力して、この紛争を全体としていい形で終わらせる、それが我々の仕事なんだと言うことを理解してくれる先生が良い
- 依頼者を説得できない弁護士が多い
- 民法の実体法の基礎は大事にすること
9 これからの民事訴訟を語らうこと
10 岡口さんのこと教えて