「外資系コンサルの知的生産術(プロだけが知る「99の心得」)」山口周
「外資系コンサルの知的生産術(プロだけが知る「99の心得」)」山口周
第1章 知的生産の「戦略」
1 「顧客の知識との差別化」を意識する
「新しさ」を出すには、「広さで出す」のと「深さで出す」のと2つの方向性がある。
2 「新しさの出し方」を決める
- 新しいとか深いとか判断しようと思ったら、「誰にとって」という点を明確化させる必要があります。知的成果を受け取る相手
3 顧客を明確化する
- 直接の発注者が「真の顧客」であるとは限らない。やりとりをsる直接の担当者が直接の顧客であるよりも、その上司あるいは経営幹部が最終的な顧客であることが多い
- 知的生産の初期段階では、生み出そうとしている知的成果物を届ける相手=顧客を明確化した上で、その人が何に付加価値を感じてくれるかをはっきりさせることが非常に重要。ターゲットが広がれば広がるほど、メッセージは切れ味を失ってしまいます
4 要求されているクオリティを抑える
- 「何を知りたがっているか」を明確化する
5 使える時間を抑える
- もっとも避けなけえばならないのは、いわゆる「なる早で」という指示です。必ず納期を明確化する
6 活用できるリソースを確認する
7 顧客の期待値をコントロールする
- 仕切りというのは要するに期待値コントロールのこと。プロジェクト開始の段階で、顧客のスピード、品質、量に関する期待値を制約条件の中で満たせないと感じたら、そのままプロジェクトをスタートさせず、まずは顧客と制約条件の調整について話し合うようにする
8 期待値のズレはすぐに修正する
- なるべく早めに対処する
- 上司やクライアントと一番話したくない時こそ、本当は一番話さなければならないとき。納期・クオリティ・コストの3つについて、妥協できるようそが何かをはっきりさせる。
- 知的生産における成功・失敗は、あくまで「顧客の期待値と実際の成果物とのギャップ」によって決まります
9 指示は「行動」ではなく「問い」で出す
- 問いを明確化する
- 知的生産活動に従事する管理職の大事な役割は、「ここまでやれば次第点」というラインを提示すること
- プロフェッショナルという80パーセントの力でクライアントを継続的に満足させられる人のこと
- プロというのは常に、求められている水準をギリギリ最低限の労力でクリアする人たちなのです。置かれている状況、作業を依頼する人の力量、扱うテーマの難易度に応じて適切なミニマムラインの設定を行うのが、管理職の大事な仕事
- 若い人がよくしくじるというが、全く誠実と熱心が足りていないからだ(夏目漱石「それから」)
第2章 インプット
10 情報ソースは幅広に取る
- 「社内資料」「社内インタビュー」「社外資料」「社外インタビュー」
11 まずはインタビューを押さえる
12 「良い質問=良いインプット」と知る
- 良い質問は、良いインプットに直結する
13 質問は紙に落とす
14 「わかったふり」をしない
- 「良い質問」というのはわからないからできるのはなく、全く逆に「完璧に分かる」からからこそできる
- 理論的に筋が通っていないように思えることにこそ、知的生産のコアにあんるネタが隠されていることが多いから
15 インタビューガイドを忘れる
- 本当に聞くことのできる人は、めったにいないものです。(ミヒャエル・エンデ「モモ」)
16 情報をインプットする前にアウトプットのイメージを持つ
17 強いのは一時的情報
- 相手が知らないような一次情報を集めて情報の非対称性を生み出すというアプローチ
- 顧客がすでに知っている二次情報を高度に組み合わせて情報処理し、インサイト(洞察)を生み出すというアプローチ
18 現場観察を活用する
- とりあえず現場に行って観察すること
- 煮詰まったらまずは虚心坦懐に現場を見ているというのは知的生産におけるゴールデンルール
- 「現場現物」を観察するにあたって重要なポイントが「あるまとまった量の時間をかけて腰を据えてみる」という点。少なくとも1にちくらいの時間をかける。なぜなら、観察による対象者への影響を少なくすることができるから
19 現地現物を現地見物にしない
- あらかじめ「問い」を持って現場に臨む
- 仮説を持つ
20 仮説は捨てるつもりで作る
- 「良い仮説」というのは、反証されることで「さらに良い仮説」を生み出すことができるもの
21 情報量は運動量で決まる
22 青い鳥を探さない
23 「とにかくなんとかする」という意識を持つ
- まず心がけとして「ありません」「できません」とは絶対に言ってはいけません。とにかくなんとかする、逆立ちしてでもひねり出してみせるという気構えを失わないこと
- なかなか突破口が見えてこないと聞い、全く違うアプローチを考えてみる方が得策であることが少なくありません
- イノベーションのほとんどは「思いついた人」ではなく「あきらめなかった人」が実現している
24 学習のS字カーブを意識する
- 高度専門家として分野で仕事を始めるということでもない限り、3ー5冊程度の主要書籍・解説書に目を通しておけばほぼ十分な情報量が得られるはず
- まず、ある領域についての書籍を3ー5冊程度読めば、その分野に関する読書の限界効用は急激に低下し、10冊も読めば、それ以上の読書が与えられてくれる限界効用はほとんどなくなります。その道の専門家としてやっていくこということでもない限り、ある分野について勉強するのであれば、まずはマックス5冊という目安を持っておけばいいでしょう。さらに、基本書・概説書を5冊読み込んで、それでもなおピロセッシングが前に進まないということであれば、そもそもプロセッシングのアプローチに無理がある可能性があります。そのような時は、焦燥感や切迫感を追い払うために闇雲なインプットに走ることになく、スタート地点まで立ち返った上で、「そもそも何をしようとしているのか?」「何が求められているのか?」といった根本的なポイントについて考え直しましょう
第3章 プロセッシング
25 文脈を意識する
- 「集めた情報を分けたり、組み合わせたりして、示唆や洞察を引き出す」
26 「行動」を提案する
- 「行動を提案する」というのはつまり「ではどうするべきか?」という問いに対して回答を出す問いうこと
- 特にビジネスにおける知的生産は「行動の提案」まで踏み込むことで初めて価値を生み出す
- 知的生産の技術と聞いて多くの人は、情報を集めて整理する、あるいはそれを分析して示唆や洞察を得るといった小手先の技術をイメージするかもしれませんが、極論すればそんな技術はどうでもいいのです。最後の最後、では、今、ここにいる私は、これから何をすればいいのか?どう生きるべきなのか?という問いに答えを出すことが最も重大であって、それに何らかの答えを出せないようであれば、そんな「私的生産の技術」は無価値でしょう
27 常にポジションを取る
- ポジションを取るというのは、論点に対する回答について肯定または成否の立場を明確化する
- 決断力というのは要するにポジションを取れるかどうかということ
- 知的生産のプロセスにおいて、早い段階でポジションを取れるかどうかは、コンサルタントの成長ステージを見極めるとても重要なポイントになります。ある程度の情報が集まった段階で自信を持ってポジションを取れるようになると、その後で急速に成長する人が多い。
- 私は自分の出した結論をなるべく声高に発表しておくようにしています。外れて「しまった」と思うことも時にはありますが、それが自分を鍛えることにもなるので、勇気を持ってやるようにしています。(中西輝政「本質を見抜く「考え方」」)
28 最初からポジションを取る
- たとえ情報が不足しているように感じられたとしても、現時点でのベストエフォートとして明確なポジションを取ってほしい
29 「考える」と「悩む」を混同しない
- 筆者自身は、高度な知的生産に必ずしも高度な思考力が必要だちは思っていません。一時間考えても答えが出ないという時、それは思考力や思考量に問題があるのはなく、ほぼ間違いなく「問いの立て方」か「情報の集め方」に問題がある
30 答えは探さず、来させる
- 「良い答え」というのは、無理やりに探しだすものではありません。適切に情報が集められ、それを虚心坦懐に見れば自然とそこに立ち現れてくるはずです。これは知的生産における奥義の一つなのでゆめゆめ忘れないようにしてください
31 「長く考える」のではなく、「何度も考える」
32 「分析」以外の脳のモードを使い分ける
33 論理と想像のモードを使い分ける
34 論理性あっての創造性と知る
35 ピンとくるオチから逆算する
- 直感こそがエキスパートとアマチュアを分ける
36 理性と感情の両方を動員する
37 立場と論理をごっちゃにしない
38 音声化と視覚化の双方を活用する
- 一次情報から洞察力や示唆を引き出すさいの作業上のコツは、紙に書き出してみて並べてみる
39 とにかく紙に書いてみる
40 とにかく人に話してみる
41 ヒューリステッィクを意識する
42 視点・視野・視座を変える
43 視野を広げる
- 考察の対象となる時間・空間を広げてみること
44 視点を変える
- 物事を多面的な側面で考察
45 視座を上げる
- 「誰の利益を背負っているか」を言う立場を変える問いうこと
- 一般により高い視座からの考察はより高いレベルの知的生産につながります
46 アルラーンを繰り返す
47 「問い」に立ち返る
48 「問い」を進化させる
49 「問い」をずらす
- 例えば、作戦の天才と言われたナポレオンの連戦連勝について、戦略論の大家であるクラウゼビッツは「勝てるところでしか戦わなかったから」と分析しています。
- 「あるべき姿」の位相をずらすことで思わぬ解決策が見つかることがある
50 「問い」を裏返す
51 「気合系」の情緒言葉に逃げない
52 用語を厳密に定義する
- 用語を関係者間で厳密に定義しておくというのはプロセッシングのクオリティを保つために必須事項
53 思考停止ワードに注意する
54 薄弱な帰納に流れない
55 反証例を考える
56 「なぜ?」と「もし?」を多用する
57 数値の皮膚感覚を磨く
58 想像力を働かせて「人」を思い浮かべる
- その人の身になってみるというのが、実は批評の極意
59 定説に流されて思考停止しない
- だからね、コペル君、当たり前のことというのが曲者なんだよ。わかりきったことのように考え、それで通っていることを、どこまでも追っかけて考えてゆくと、もう分かりきったことだなんて、言っていられないようなことにぶつかるんだね(吉野源三郎「君たちはどう生きるか」)
- セオリーに反しているのにうまくいっているということは、もしかしたらよく言われているセオリーが間違っている可能性があるわけで、これは大変貴重な「気づき」を得るチャンスだと考えた方がいいのでしょう。世の中で一般に言われているセオリーが間違っているということに、自分だけで気づいているということは、「世間」と「自分」との間に情報の非対称性が生まれているということ
- 学問で最も重要なことは新しい知識の蓄積ではなく、当たり前だと普段信じて疑わない常識の見直しです(小坂井俊晶「社会心理学講義」)
60 禁じ手に着目する
61 作用と反作用を意識する
62 「わからない」という勇気を持つ
63 権威に盲従せず、逆に従わせる
- 安易に「偉い人がこう言っているから」という根拠でプロセッシングを行うと、アウトプットのクオリティを台無しにしかねないので注意が必要。教科書に書かれていることを盲信してしまう傾向になるので注意
- 大家の論考を丸呑みすることなく、あくまで自分で考えた論理展開を補強するためのパーツの一部として使えばいい
第4章 アウトプット
64 「less is more 少ないほどいい」と知る
- 大切なのは普通の語で非凡なことを言うことである(ショウペンハウエル「読書について」)
- 「少ないほどいい」。なぜなら、効率がいいから
- ビジネスにおける知的生産は最終的に「望ましい行動を起こさせること」を目的にしている
65 what why how の三点セットをまとめる
- what やるべきこと
- why その理由
- How 具体的なやり方
66 抽象行動用語を使わない
67 ベクトルではなく、到達点を知る
68 説得よりも納得を、納得よりも共感を追求する
69 論理・倫理・情理の3つのバランスを取る
70 受けての反応を予測する
71 「伝え方のアプローチ」を決める
72 アウトプットの表現フォーマットを決める
73 質問には答えずに質問で返す
- 顧客が質問する時、それが本当の意味で質問であることは滅多にないからです。質問という名を借りた反対いけんや懸念の表明であるケースが多い
74 アウトプットが出ない時は、インプットを見直す
- アウトプットが出ない時こそ、インプットに再度目を向けて、「聞くべき人に話を聞いているか」「読むべき資料にちゃんと目を通しているか」という点をチェックしてみましょう
第5章 知的ストックを厚くする
75 ストックが厚くなると洞察力が上がる
76 知的ストックで常識を相対化する
- イノベーターに共通する特徴として、誰もが当たり前だと思っていることについて「why?」を投げかけることができる問いう点
77 私的ストックで創造性が高まる
- アナロジーとは、異なる分野からアイデアを借用する問いう考え方 パクリということ
- 創造性とは何かをつなげること。創造とはものは、「何か新しいものを生み出すこと」ではなく、「新しい組み合わせを作ること」でしかない
- 「イノベーターは成功したから多く生み出したのではなく、多く生み出したから成功した」。例えば、ある科学者の最も優れた論文の引用回数は、その科学者が残した論文の数に比例します。また、サイモンとは同時に、科学者が生涯で最高の仕事をしている時期は、最も多くの論文を書いている時期であり、そしてまた最も「ダメな論文」が生まれる時期であることも指摘しています。これらの指摘は要するに、アイデアの質はアイデアの量に依存する問いうことを示しています
78 ストックを厚くするべき知識分野
79 読みたい本だけ読む
80 メタファー的読書とメトニミー的読書を使い分ける
81 短期目線でインプットを追求する
82 心地よいインプットを心がける
83 英語でのインプットを心がける
84 常に「問い」を持つ
85 自分らしい「問い」を持つ
86 ガベージイン=ガベージアウト
87 身の丈にあったインプットを
88 欠損があっても構わない
89 「いいインプット」を見極める2つの軸
90 独学する
91 「時間を防御する」という意識を持つ
92 世界を観察する文化人類学者たれ
93 違和感を手掛かりにして世界を理解する
94 相対主義という「感性の鈍麻」にとらわれない
95 冷蔵庫ではなくいけすを作るイメージを持つ
96 情報という魚を選び抜く
97 情報という魚に優先順位をつける
98 イケスにテーマを設定する
99 イケスに合う魚を釣り上げる